この本は一九九六年に出版された「あの戦争から震災まで」を加筆修正し、電子版として出版したものである。
この本の構成は次の三つの部分から成り立っている。
第一部は「神戸新聞文芸」に応募し入選した作品を中心に構成されている。
一九八六年、神戸新聞は読者から小説・エッセイ・児童文学を募集し、入選作を週一回、紙面の一ページを割いて掲載するという「神戸新聞文芸」の企画を始めた(この企画は現在も続いている)。
私はこれに応募し、第一作「上筒井・西灘界隈」をはじめ数年間に十一篇が入選し、「望楼の決死隊」は一九八七年度のエッセイ部門優秀賞を受けた。
これらの作品では一つ一つのテーマについて、私自身の過去へのこだわりと、それが現在とどうつながっているかを可能な限り整理してみたかった。従って一つの作品には必ず私の過去と現在が交差している。これらは私にとっての「自分史」であるが、極めて個人的な体験を、思い込みや感傷を排して、どこまで普遍性をもって語ることができるかということに細心の配慮をしたつもりである。
第二部には二〇一六年、「国民みらい出版」より「平和の祈りブックレットシリーズ 第一集」として出版された「あのとき私は小学生 戦争を知らない人たちに伝えたいこと」をそのまま載録した。
第三部は私が直接体験した「阪神・淡路大震災」の記録である。
あの地震は戦後五十年目(当時)に私をして再び様々なことを根源から問い直し、書かずにいられない気持に追いこんでしまった。「あの戦争から震災まで」というタイトルの意図するところは、第三部を書くことによって、そのテーマ性を極めて明確にすることができたと自負している。
著者プロフィール:
中村茂隆(なかむら しげたか)
1932年 神戸生まれ
1939年 神戸市立摩耶小学校入学
1945年 兵庫県立第一神戸中学校入学
1948年 兵庫県立神戸高校入学
1952年 東京芸術大学音楽学部作曲家入学
1956年 東京都中野区立第十中学校教諭
1957年 神戸大学教育学部助手
1995年 神戸大学発達科学部を停年退官
神戸大学名誉教授
神戸・大阪を中心に作曲活動を行う
著書:
1992年 『映画だいすき少年の戦中・戦後日記』(シネ・フロント社)
1996年 『あの戦争から震災まで』(自費出版)
2006年 『里に移りて―手紙と日記に遺された集団疎開の記録』(新風舎)