富井篤著の既刊書の中から、すでに絶版となっている前置詞活用辞典、英語数量表現辞典、技術英語構文辞典(以上、三省堂)、技術翻訳のテクニック、続技術翻訳のテクニック(以上、丸善)と、現在、依然として販売されている、科学技術和英大辞典、科学技術英和大辞典、科学技術英語表現辞典、科学技術英語動詞活用辞典(以上、オーム社)など、9冊を厳選し、それらを解体してエッセンスだけを取り上げた上で加筆再編し、電子書籍の「技術英語 奥義と裏技」シリーズとして順次出版しています。本書はその第4巻目で、上記した英語数量表現辞典(三省堂)の中から一部切り取り、「数量表現」と題して出版されたものです。原稿の編集や出版等については渡辺恵子(実務翻訳者)が協力しています。
第4巻となる本書では、技術英語およびその翻訳に際しては、絶対に避けて通ることのできない「数量表現」について 第1編 基本パターン、第2編 数量語句周りの各種表現の2つに分けて解説しています。
■ 本書全体を貫く思想
全体を通して、「数量表現」をマクロ的に捉えています。すなわち、第1編「基本パターン」では、「数」と「量」を含む表現が「文」全体をなしている場合と「文」の一部、すなわち句、になっている場合の2つに大別し、そしてそのそれぞれを、「通常の表現」と「感情を込めた表現」の2つに分け、トータルとして、「数量表現」を4つのシチュエーションに分けて解説をしています。すなわち、「数量表現とは何ぞや」ということを広く大きく取り扱い、数量表現全体を俯瞰することになります。次いで第2編「数量語句周りの各種表現」では、数量語句の前に付いたり後ろに付いたりする、さまざまな表現をできる限りミクロ的に取り上げています。
■ 本書の全体像
第1編では、つぎの4つのシチュエーションに分けています。
Ⅰ 何々はどのくらい(数値+単位)である
Ⅱ どのくらい(数値+単位)の何々
Ⅲ 何々はどのくらい(数値+単位)もある(しかない)
Ⅳ どのくらい(数値+単位)もある(しかない)何々
要するに、Ⅰは数量語句が1つの文を構成しているものであり、Ⅱは数量語句が文の一部、すなわち句 となっているものです。さらに、ⅢはⅠの文に感情を表す表現を込めているものであり、ⅣはⅡの句に感情を表す表現を込めているものです。
第2編では、数量語句周りの各種表現、たとえば、例えば、「以内」、「概略」、「間隔」、「範囲、「平均」、「合計」、「四捨五入」、「~毎」などを取り上げています。
■ 本書で注目いただきたい項目の例
◍ ある一点の物理量の表し方
例えば、100ºCの温度においてという場合、英語では、a temperature of 100ºCと書きますが、あまり理屈はいわず、次の5つの構成要素を確実に丸覚えすることが必要です。
5つの構成要素とは、(i) 不定冠詞: a [またはan]、(ii) 単数形の物理量の名称: temperature、(iii) 前置詞: of、(iv) 数値: 100、(v) 単位: ºCです。「おいて」も表現したい場合は、前置詞atを使ってat a temperature of 100ºCとすればよいのです。
◍ 範囲を持つ物理量の表し方
全体の語順としては上記の場合とあまり変わりませんが、若干、しかし大事な違いがあります。上記の例と比べやすいように、温度を例にとって説明します。例えば、(最大)100ºCまでの温度という場合です。今度は、temperatures up to 100ºCとなります。
すなわち、(i) 無冠詞、(ii) 複数形の物理量の名称: temperatures、(iii) 範囲語: up to(down to)、(iv) 数値: 100、(v) 単位: ºCです。
◍ have動詞の便利な使い方
数量表現に関しては、have動詞をよく学校英語とは違った使い方をします。例えば、
「水の沸騰点は100ºCである」という場合、学校英語で書くと、The boiling point of water is 100ºC. と書きます。決して間違ってはいませんが、彼らの書いた英例文を見ていると、よく、同じことを言うのに、Water has a temperature of 100ºC. と書いています。最初の英文はThe boiling pointが主語になっており、次の英語はWaterが主語になっている。「だから後者は元の日本語とは意味が違うはずだ」と思ってしまいがちですが、そのようなことはありません。
「数量表現」というものは、特に和文英訳の際に、「単数」か「複数」かの問題、「冠詞」の選択の問題、主語の選択の問題、数詞と単位の問題などなどを考えると、学校英語や辞書英語だけでは絶対にできるものではありません。本巻には、この種の記述が随所に含まれています。
目次
まえがき
第1編 数量表現の基本パターン
Ⅰ. 何々は何々である
1. … は(数値+単位)である。
2. ― の … は(数値+単位)である。
(1) ... of ― is (数値+単位).
(2) ― has a ... of (数値+単位).
★翻訳のヒント[1]:have動詞の使い方
3. ― は … が(数値+単位)である。
(1) ― is (数値+単位) in ….
(2) ― is (数値+単位) ==.
Ⅱ. 何々の(が)何々
1. … が(数値+単位)の ―
(1) 数量語句+名詞
★翻訳のヒント[2]:単位を綴る場合には単数形
(2) 名詞 + 数量語句
(3) 名詞+他の語句+数量語句
2. (数値+単位)の ...
(1) 一点の物理量
★翻訳のヒント[3]: minimumやmaximumでも不定冠詞
★翻訳のヒント[4]:数量表現における副詞の位置
(2) 範囲のある物理量
★翻訳のヒント[5]:数量の範囲を表す時の単位の書き方
(3) 範囲ある物理量の一点
3. (数値+単位)の―
(1) 数量語句が物質名詞を修飾
(2) 数量語句が普通名詞を修飾
4. (数値+単位)(単独の形)
Ⅲ. 何々は何々もある(何々しかない)
1. … は(数値+単位)もある(しかない)
2. ― の … は(数値+単位)もある(しかない)
(1) ... of ― is as ~ as (数値+単位).
★翻訳のヒント[6]:助動詞の省略法
(2) ― has a ... of as ~ as (数値+単位).
3. ― は … が(数値+単位)もある(しかない)
(1) ― is as ~ as (数値+単位) in ….
(2) ― is as ~ as (数値+単位) ==.
(3) ― is as ~ as (数値+単位).
Ⅳ. 何々もある(何々しかない)何々
1. … が(数値+単位)もある(しかない)―
(1) 名詞 + 数量語句
(2) 名詞 + 他の語句 + 数量語句
2. (数値+単位)もある(しかない)...
(1) 物理量 + 数量語句
(2) 物理量 + 他の語句 + 数量語句
3. (数値+単位)もある(しかない)―
(1) 数量語句が物質名詞を修飾
(2) 数量語句が普通名詞(可算)を修飾
4. 最大(小、少、高、低など)、(数値+単位)も(しか)
(1) 動詞の目的語としての用法
(2) 前置詞の目的語としての用法
●Teatime (1) 日本語にも名詞の複数形を
第2編 数量語句周りの各種表現
1. 以内
2. 概略
★翻訳のヒント[7]:approximatelyとabout
3. 間隔
●Teatime (2) 月光菩薩 「げっこうぼさつ」ではなく「がっこうぼさつ」
★翻訳のヒント[8]:ハイフンによる造語、spindle-like
4. 範囲
★翻訳のヒント[9]:「XからYの範囲」のXおよびYが動名詞
★翻訳のヒント[10]:数値の範囲の表現の始点には単位記号は不要
★翻訳のヒント[11]:「範囲」において始点や終点が明確な一点ではないことがある
★翻訳のヒント[12]:"of from (数値) to (数値+単位)" という表現は避けたほうが良い
★翻訳のヒント[13]:数値の範囲をtoまたはハイフンで表す
★翻訳のヒント[14]:rangeは「範囲」ではなく「~台」を表していることがある
★翻訳のヒント[15]:on …… rangeのrangeはメーターなどの「レンジ」
★翻訳のヒント[16]:"from (数値) to (数値+単位)"の場合、toの代わりにthroughが
5. 平均
6. 合計
7. 四捨五入[丸める]および桁[位]
8. ~当たり(~ごとに、~につき、毎~なども含む)
★翻訳のヒント[17]:~ごとに、~別に の表現
次巻の予告
編集後記
奥 付
著者略歴
富井 篤: 1934年横須賀生まれ。日本大学理工学部卒業。アメリカ系産業機械メーカーを退職後、(株)国際テクリンガ研究所を設立、爾来、翻訳歴40年、翻訳指導歴37年、執筆歴35年。著作、訳本・CDを含め40冊
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