はじめに
本書「誤訳から学ぶ中国語2」は中国語教材です。
レベルは中級程度です。
構成は次の通りです。
1.日本語の文
2.日本人(私)の中国語訳
3.中国人ネイティブの中国語訳
4.解説
つまり日本語の文を、日本人の中国語訳と、ネイティブの中国語訳で比較して、なにがだめなのか、なぜだめなのか、を考えるものです。
本書はシリーズの第二冊目です。
みなさまの中国語学習にお役に立てれば幸いでございます。
2015年10月16日
平山崇
作者紹介:
平山崇。蘇州大学大学院修士課程修了、日本語教育能力検定試験合格、認定心理士。中国で日本語教育に10年、日本で2年携わる。また中国で20冊の著書を出版、日本で3冊。キンドルは65冊出版。 小説、作詞・作曲、映画撮影の技術を応用しエンタメ日本語教育を創始する。
抜粋
[20]「許せない」は、許そうとする努力がなく、最初から最後まで許さない意志を貫いている。「許せない」は、「許そうとしたが、やはり許せない」という経過がある。言葉として重く響くのは「許せない」のほうである。
■日本人の訳
“許せない”表示没有努力去原谅,从最初到最后一贯不原谅的意志。“許せない”则有“试图原谅,但是还是不能原谅”这一过程。作为言辞,更严重的是“許せない”。
□ネイティブの訳
“許せない” 表示(※没有做去原谅的努力),(不原谅的意志贯彻始终)。“許せない”则有“试图原谅,但是还是不能原谅”这一(努力去原谅的)过程。(语气比较严重)的是“許せない”。
【解説】
・日本人の訳の<没有努力去原谅>と、ネイティブの<没有做去原谅的努力>は、どちらがいいのでしょうか。他のネイティブの中国語教師に聞くと、これは日本人の訳のほうがいいということです。ネイティブの訳の連体修飾部を【 】で表すと、<没有【做去原谅的】努力>となりますが、ここに動詞の<做>と<去>と<原谅>が続いているので、意味がつかみにくいです。一方の日本人の訳は、<没有努力>で一つのまとまりとなり、次に<去原谅>がくっついているので、構造的にわかりやすいのです。
・原文が「最初から最後まで」だから訳文も<从最初到最后>とするのは発想が単純すぎます。こういうときに四字熟語が力を発揮します。<意志贯彻始终(意志を貫く)>で覚えましょう。
・<作为言辞>はまるまる削除されました。それは中国語において、「言葉として」という表現があまりに自明で、言う必要がないからです。