本書は、夕陽亭文庫版太平記の九冊目です。巻三十五から巻四十までを収録しました。四十年以上の内乱を経て、ようやく太平記も本巻で「結末」を迎えます。二代将軍足利義詮が逝去して、細川賴之が管領に就任。これで「目出度し、目出度し」とは、なんとも他愛ない結末のようですが・・・
それでもどこかでお仕舞いにしなければ、応仁の乱や戦国時代にまでずるずると続いてしまいそうですね。
本書は、流布本系統の元和二年(一六一六年)刊の古活字本(カタカナ本)をベースに、他の諸本も参考にして字句等を校訂したものですが、読みやすさや技術上の理由から、カタカナを平仮名に改め、漢文体の表記は全て読み下し文に直し、かつかなりの漢字表記を平仮名表記に改めています(振り仮名も付けていますのでご安心を。太平記本来の「歯ごたえ」をご期待の方々には申し訳ございません。)。その意味では、平成の夕陽亭版の写本です。若干(この「若干」という語は、本書本文中では「そくばく」と読んで、「相当量」「たくさん」という意味ですが、ここではそういう意味ではございません。)ですが、脚注も付けました。本文中の注番号をクリックすると開くようになっています(開きにくいときは、なるべく上の方をクリックしてください。)。