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Matsushitabunpojunkyo Hajimetenokanbunpo (Japanese Edition)

本書は松下文法に準拠した漢文法書です。管見では松下大三郎博士の「標準漢文法」は我々日本人が日本語で読める唯ひとつの理論文法
書ですが、八百項を超える大部なものですから、漢文を初めて学ぼうとされる方にはあまりにも負担が大きいものです。かといって巷に並ぶ漢
文の学習書はいずれも句形の説明に終始しておりまして、それだけでは到底漢籍を独力で読み進めていくだけの力は養えません。また戦前
の漢文参考書は概ね多読によりその法則を自得せしめることを前提としており、王道とは雖もまたやや迂遠の嫌い無きにも非ずと思われま
すので、自らの浅学菲才をも顧みずして繁にもあらず、簡にもあらず、その中間に位置するものとして本書を著すことにしました。

【本書の対象者】:
漢文を本格的に学ぼうと志されている初学者。説明は易から難に及び、漢文読書に必要な基本的事項はこれを細大漏らさず含みましたので
独学者の学習にも大いに益するところあろうと思います。

【本書の特色】:

●日本語との語順の違いを重点的に学べるようにしました。:漢文の学習が頗る効率的に進むはずです。漢文は一般に日本語よりも英語に近
いようにも言われますが、詞の排列に就きましては実は日本語のほうに近く、英語のような乱雑な連詞構成ではありません。「日本人が漢文
を作るのに、文字の顛倒が難しいなどと思うのは全く下らない話である。」と松下博士が述べておられるほどです。よって私は総論に於いて日
本語と漢文とで異なるところに特に重きを置いて解説しました。

●文法的直訳を心がける。:たとえば「不」などは依然として日本語の「~せず」「~すべからず」などの「ず」に当たるものとして説かれますが、
英語の「not」が否定の副詞であると同様、「不」も亦た副詞なのです。「不の字に美人だ」の「不」などは修用語として否定語が用いられている
例です。漢文の「不」もこの気味です。読むぶんにはどう読もうが、「不」が副詞であり且つ修用語であることを意識しなければなりません。日
本語の助辞「ず」とは全く文法的性能が異なるのです。また副詞は下の詞に掛かることになりますから果たしてどこまで掛かっておるかの問
題が生じます。これは英語の「not」も副詞ですから同様の問題が生じえます。たとえば次のような文は修用語である「not」がどこまで掛かって
いるかを考えなければならないのです。

(例)I never fail to appear in time for dinner without telephoning or telegraphing.
果たしてこの「never」はどこまで掛かるのか、「電話や電報もしないで間に合わないことはない」なのか、「電話や電報なしでも必ず間に合う」
なのか。どこまで掛かるかの問題は漢文だけではないのです。塚本哲三氏の「漢文解釈法」という書に「下に掛かる文字を保留して、下の思
想のまとまりを考えよ」とあるのですが、それはこれを指して言うのです。これらは解釈によって解決するしかありません。塚本氏は例として以
下のようなものを挙げられております。

「不以其道得之」(其の道を以ってせずして、これを得、とも読めますし、其の道を以ってこれを得ず(其の道を以ってこれを得る、というわけでは
ないの意)、とも読めます。意義に大差ありませんが後者の読み方が一般的です。また前者の「以」を「以ってす」と読みうるわけは松下文法で
いうところの変態動詞なるものがあるためです。変態詞は漢文の妙味の所以ですから本書では説明が冗繁に流れるも敢えて避けずに微細に
述べました。)

もう一つ例を挙げますと:「不唯許國之為」の「為」を従来日本語の名詞に当てて「唯に許国のためのみならず」と読み慣わしておりますが、こ
の「為」は松下文法に則りますと連体語を受けるようなことはないため、上記の訓読は意訳ということになります。「為其象人而用之也」を訓読
して「其の人に象りて之を用いしが為なり」と読み下すものもあるのですが、このような訓読では初学者の混乱を招くと思うのです。なぜなら、
前者は連体語が前にあり、後者は連体語が後ろにあるように感ぜられるからです。無論、これは訓読に誤られたものといえども混乱の元たる
を免れません。特に初学者の方は、漢文を読むときに訓読に引きずられることのないよう気を附けてください。そのためには漢文そのものを文
法的に研究しなければならないのです。

最後にもう一つ例を載せておきます。西田太一郎氏の「漢文の語法」という書では「孝而安民子其圖之與其危身以速罪也」を倒置として説明
しておりますが、松下文法では理論を押し広げてこれをいとも簡単に解き明かします。結論だけ申せばこの「孝而安民子其圖之與」と「孰與」
(「孰與」は一般にイヅレゾと読む慣わしですが、それは意訳です。)とを文法的に同じ構造だと看做すのです。「與」の上にある詞が普通の動
詞か、「孰」という不定動詞かという違いがあるのみであるというのです。

注)「漢文の語法」の考え方:「孝而安民子其圖之、與其危身以速罪也」を「與其危身以速罪也、孝而安民子其圖之」(其の身を危うくして以っ
て罪を速(まね)かんよりは、孝にして民を安んずるをば子其れこれを図れ)の倒置だというのです。

一見異なって見えるものも、理屈を突き詰めていくと同じいものであるという説明の為し方は松下文法では縦横に発揮されています。あれはあ
あで、これはこう、というのではなく、あれもこれもこうである、というのです。実に明瞭判然としております。単に句形を暗記しておるだけでは到
底納得できないような格に入らざる語法も体系的に文法知識を学べば何の扞格するところもなくなりましょう。

●練習問題を入れました。:文法的に関連ある漢文(白文)問題を適宜いれてあります。白文などいきなり読めるか不安かも知れませんが、漢
文は対になっておることが多いので一方が読めれば他方もおおよその察しが付くものなのです。たとえば、

「教化國家之急務也而俗吏慢之風俗天下之大事也而庸君忽之」

このままで読めなくとも、大きく句読を切ってみますと:

「教化國家之急務也而俗吏慢之、風俗天下之大事也而庸君忽之」
このように綺麗に対になっています。前半の句を読んで見ますと「教化は、国家の急務なり、而るに俗吏これを慢(あなど)る」と読みます。これ
と全く同じ構造の後半の句は漢字の意義さえ分かれば読めるはずです。「庸君」は凡庸の君、「忽」はゆるがせにす、と読みます。

【本書の内容】

《総論》:ここで漢文法の基礎知識を学びます。

《解釈篇》:白文読解を通して文法の知識を応用していきます。文法理論の考証をするわけではありませんから、日本人の漢文も収録しまし
た。所々注釈を参照し、読者が自力で漢籍を読み進められるだけの根底力を培えるように工夫しました。漢籍読書にあたり興りうる群疑を解
消する目的に添うため、初学者にとってはやや細かいと思われる文法事項にまで説き及びました。

収録文出典(白文): 教育勅語、臨別與諸生(吉田松陰)、學記(禮記)、李斯・諫逐客書、荘子・天地、新論(會澤正志)、小學・嘉言、孟子
(萬章問友)

《論語後案臆解抄掇》:青年らがどれほど成長するかおそろしいという意味で我々がよく使う、論語子罕(しかん)篇の「後生可畏」(後生畏る
べし)の段の解釈を、黄式三の「論語後案」と陳大齊の「論語臆解」とより引用しながら支那人自身の漢文の読解の仕方を見ます。「論語臆
解」では上記論語の一節を解釈して遂には社会進化論にまで敷衍されることになります。近時の支那文ではありますが訓読し、文法的説明
を付しました。

《「太平記」訳文例》:太平記の青砥 藤綱(あおと・ふじつな)のことを記した部分、十銭を川に落としそれを拾うのに五十銭費やしたという話で
す、その漢訳を山本北山の作文率より引用し、漢作文の一斑を示しました。全部に語釈、訓読、文法説明を施しました。

漢訳の出典は右の通りです: 中井履軒、頼山陽の日本外史、大日本史、宇野新の明霞遺稿、林春斎の続本朝通鑑、服部南郭の大東世
語、山本北山

【最後に】
荻生徂徠は、自ら読書法を述べて云います。
「學者之病在求從頭皆解、此雖似佳事廼其心胸窄陋不能優柔饜飫、非讀書器」
「学者の病は頭より皆解するを求むるに在り、此れ佳事に似ると雖も、廼(すなわ)ち其の心胸窄陋(さくろう)し、優柔饜飫(えんよ)する能(あ
た)はず、読書の器にあらず」と読みます。本書初学者を対象とするとは言え必ずしも理解に容易なる記述ばかりではありません。しかし、な
にも初めから全てを理解しようとせず、疑問のところは何か手帖でもこしらえてそれに書き留めておき事ある毎に繰り返し読んで胸中に蓄積し
ておけばよいのです。いづれ渙然として冰釋するに到るものです。

*「窄」「陋」はどちらもせまいの意。
*優柔饜飫は安らかにして心に十分満足すること。

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