突然目が覚めた俺が見たものは、足元で蠢く無数の腕。その腕の先には手が付いており、ゆっくりとグーパーを繰り返している。
この腕は床から生えているのはたしかだが、どうやって生えてきてるのか確認したくなった俺は、ゆっくりとベッドの端から覗き見る。
そこには血だまりがあった。その血の中から、たくさんの腕が生えているのだ。
その生え際を確認したとき、俺はあることに気付いた。
部屋が様変わりしているのだ。壁中にたくさんの写真が貼られ、明らかに俺の部屋ではない。そして、視線の先には鉄扉がある。俺は、無数の腕に触れないように迂回して進み、鉄扉を体全体で押し開けて、先に進む。
扉の先は真っ白な世界。どこまでも続く白い世界に、存在するのは俺ただ一人。
歩いて行くうちに、ふと俺はこう思った。
俺が念じれば、何でも創れるのではないかと。
「フェラーリよ、出でよ」
俺は、試しにそう言った。
すると、本当に真っ赤なフェラーリが出てきた。
面白くなった俺は、タバコを創って深く吸い、洋服を出して着替えた。そして、フェラーリに乗り込み、アクセル全開で走らせる。
ドリフト走行をしたくなった俺は、思い切りハンドルを左に切った。
俺の視界は真っ逆さまになり、大きな衝撃音が鳴った。頭に触れると、俺の頭は潰れていた。俺の意識は遠のく。痛みがないことが、救いだった。