世界中にある絵の中で最も美しい絵はどれかと問われて、サンドロ・ボッティチェリが描いた『ラ・プリマヴェーラ(春)』を思い浮かべる人は少なくないのではないでしょうか。この絵を眺めていると、私たちは自然と何かを感じ、甘美な夢の世界に浸ることができます。そのためにことさら特別な知識が必要ということはありません。美しく、優雅で、澄明で、官能的なこの絵は、私たちの感性の奥深いところまで直接的に訴えかけてきますが、同時に私たちの知性に高度に洗練された挑戦と幾重にも重なった謎を投げかけてくるのです。それだけに、この絵にまつわるほとんどすべての文学的源泉や象徴的含意を知れば、一層興味が湧き、楽しさがさらに深まるに違いありません。内容は以下の目次を参照願います。
はじめに
1.師フィリッポ・リッピ
2.サンドロ・ボッティチェリ
3.『ラ・プリマヴェーラ(春)』一望
4.『ラ・プリマヴェーラ(春)』の来歴とタイトルの起源
5.『ラ・プリマヴェーラ(春)』の舞台
6.『ラ・プリマヴェーラ(春)』に描かれた思想―ネオ・プラトニスム-愛の統合
7.『ラ・プリマヴェーラ(春)』の占星術的含意
8.『ラ・プリマヴェーラ(春)』の音楽的含意
9.『ラ・プリマヴェーラ(春)』に描かれた愛の3相
10.『ラ・プリマヴェーラ(春)』に描かれた花々の含意
11.シモネッタの生い立ち
12.ボッティチェリとシモネッタの関係
おわりに
参考文献