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Goboin Kasetsu to Nihon Bunka (Japanese Edition)

0.はじめに
 音と意味の間に恣意的な関係しかなく、音自体に直接意味は付加されていないという考え方が言語学の根底にある。しかし、意味と音は関連が全くないとは言えない現象もある。
(1)a. patter(パタパタと音を立てる)、pop(パチッとはじける)など。
b. spout(吹き出る)、spread(広げる、散布する)、sprinkle(散水する)など。
c. stop(止める)、drop(落ちる)、drip(滴る)、flap(はためく)、flip(弾く)、
flop(ドスンと落ちる)など。
d. apple(林檎)、pineapple(パイナップル)、ear(梨)、peach(桃)、plum(李)、
papaya(パパイヤ)、persimmon(柿)、pomegranate(石榴)、 grape(葡萄)、
grapefruit(グレープフルーツ)、banana(バナナ)、fig(無花果)、mango(マ
ンゴ)、melon(メロン)、lemon(檸檬)など。
 (1a)は擬声語で、ある音に最も近い単語を用いてその音を表す形式、(2a)はspの音の連鎖が、「活力が何かを突き破って『ほとばしりでる』という感じを与え」(『音声学』安井泉著、開拓社p.387)、(1c)は「短母音+p」の連鎖が、「何かの力が加わって、急激に動き、即止まる」というイメージがある。
 (1d)により、(1c)のイメージからさわやかなイメージが派生し、その結果フルーツ全般にpまたはp系列の音(bやf)、更にはpのごとく口を閉じるm音が入っている場合が多いのではないかという類推ができる。
 英語語源のフルーツ名にこの傾向が見られる。ちなみに、果物の代表格であるorangeにp系列がないのは、元来、「香り高い」を意味するインド南部のドラヴィダ語naruに由来し、サンスクリット語に入ってnarangahとなり、アラビア語を経て、スペイン語でnaranjaとなり、naranjaがフランスのプロヴァンス語に入り、その果実の色から「黄金」を意味するauが付加されauranjaとなり、フランス語で金を意味するouに置き換えられorengeに変化し、最後にorangeの綴りになったということ(ネット上の『語源由来辞典』による)で、そもそも英語語源ではないからであろう。
 (1b-d)のデータより、子音p自体、あるいは、他の子音や母音と組み合わされば、何らかの意味を持つ可能性があると考えることができる。
 子音と意味の関係は、100%恣意的なものであるとは言い切れない可能性があるわけである。これが母音と意味の関係にも言えることであるかどうかを論考するのが、本稿の目的である。

 特に、5つの母音[日本語におけるアイウエオ](英語では5つの母音字)に焦点を当て、日本文化との関わりも視野に入れ、論考を進める。
 尚、学問研究に必要な論理性と柔軟性を見失うことなく、やや大胆な論を展開したいと考えている。ただし、本論考は、あくまでも一論文のレベルであるとは判断できず、信頼性や妥当性においては研究ノートの域を出ず、創造性や発想力の視点からは、エッセイのジャンルに位置するものであると付記しておきたい。
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