ーまえがきよりー


―はたして人類における犯罪とその根絶は可能なのか―

「犯罪者は、自分が困難の中におり協同的な仕方でそれに直面するだけの勇気を持たず、安易な解決を求める時に、犯罪を計画し準備する―」

本書は、精神科医師・心理学者であったアルフレッド・アドラーが説いた「犯罪予防」についての考察を本人の著書から紹介する。

アドラーは自らが接した犯罪者達と一般人の違いを説明する。

「すべての犯罪者の行動や態度において、その人は、優越しよう、諸問題を解決しよう、諸困難を克服しようと努力していることを示している。その人を他から区別するのは、その人がこういう仕方で努力しているという事実ではなく、むしろ、それはその人の努力が取る方向なのだ―」

アドラーによれば、犯罪行動は常に幼少期に発する誤ったライフスタイルから生じる。遺伝が犯罪的パーソナリティの主たる原因であるとする一般的に知られていた考えを斥け、アドラーは問題を対人関係的なものとみた。アドラーは多くの犯罪者は貧困に喘ぐ混沌とした家庭で、望まれない子供として生まれるという事実を強調した。そして、大抵の犯罪者は社会経済的な背景にかかわらず劣等感があって、共同の勇気が欠けていることを指摘する。

アドラーのアプローチは「どんな犯罪者もすべて変えることができる」というものであった。そして犯罪がエスカレートすることを防ぐために、いくつかの具体的な提案をしてゆく―。

犯罪はなぜ起こるのか？　何が人を犯罪に走らせるのか？
それを防ぐ手立てはあるのか？　本当に有効な手立てとは？
アドラーが説いた犯罪の根源、そして彼が見出した解決への道筋を紹介する。