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How does it work in Paris 2: A reading on the subsistence of a Dream town (Japanese Edition)

「大きな政府」の下、フランスでは他国より左派が強いように見える。なぜ強いのか、本当に強いのか、左派の存在と権力集中の構図はどうつながりがあるのかーーなど、左派リべラシオン紙や右派フィガロ紙で記者として働いた後、パリ政治学院(政治専攻)に転じたエリック・デュパン教授(53)に聞いた。

 ーーなぜフランスは左派が強いのですか?
 ◆政治的には過去の選挙で左派はしばしば少数派だった。ただ、国民の意識の中では左派は非常に好印象で、象徴的な地位を得ている。このため、たとえばサルコジ大統領は左派から有能と見られる人材を政権に登用し、自らも、ブルジョワでかつては左派支持だった歌手のカーラ・ブルーニさんと結婚もした。
 左派が象徴的な地位を得ている理由は、まずフランス革命が挙げられる。革命を通じて左派はいい位置を保持し、人々の中に左派支持の印象を残した。そして、第2次大戦でナチと戦った多くが左派だったことから、左派の地位は「自由のために抑圧と戦った」として、一層強化された。左派の中にはナチと共謀した人もいたが、右派の比ではなく、戦後「右派は過った」との印象が焼きついた。こうした歴史的背景から、左派の特に研究者、教育者、芸術家らは左派であることを誇りとし、右派はつい近年まで誇りを持って右派と表明するのに躊躇していた。
 左派ミッテラン政権時代(81~年)でも、初期の81~83年は真の左派政権だったが、その後はシラク政権下の「保革共存」でのジョスパン(社会党)政権を含めて、実際の政策はより自由主義経済的だった。
 ーーつまり現状で左派が政権を奪回するのは難しいということですか。
 ◆左派・社会党は今もなお象徴的な地位を保っているが、確かな政策を提示し、人々の暮らしに根付いているという形ではない。社会党はかつて労働者層に根付いていたが、今は労働者層の支持はより急進的な左翼、あるいは民族派右翼、さらに最近は失望感が広まっているにしても、右派・サルコジ政権にまで分散している。社会党内では右派・社会民主主義路線と左派・反市場主義路線での分裂が鮮明化し、社会党全体としての政策が打ち出せないままでいる。
 ーー権力集中と左派の影響の関係は?
 ◆フランスはイデオロギー面ではいつも他国より影響が出るのが遅れていた。左派のイデオロギーがもたらされたのは世紀で、英国や米国ではすでに自由主義経済に大きく踏み出していた。年選挙で自由主義経済を提唱するサルコジ大統領が当選したが、国際社会の多くはすでに自由主義経済を大きく進めていた。フランスは例外的な立場にある。これまでの経緯から自由主義経済が進む路線にはあるが、年来の国際金融危機で市場経済が批判され、フランスが自由主義経済を推し進めるとは考えにくくなっている。サルコジ氏は選挙運動で財政赤字の削減や公務員の人員削減など「小さな政府」を提唱してきたが、国際金融危機以降、事態は変わった。彼は現在、そうした主張を前面に出さなくなっており、銀行や産業界に巨額の政府支援融資を注ぎ込んでいる。今後の予測は難しく、こうした状態となった後に「小さな政府」「大きな政府」という判断基準は大きな意味を持ちにくくなるのではないか。
(中略)
 ーーボボの存在と左派支持の関係は?
 ◆フランスの左派にとって大きな問題は、支持者が労働者層と中産層と中上流層に分かれている点だ。いずれも左派支持者だが生活態度や考え方は大きく異なり、すべての層の支持を得るのは難しい。労働者層の何割かは極左や極右支持に流れており、ボボの中には左派というよりむしろ資本主義者的な行動様式をとる人も少なくない。労働者層は教育機会が少なく、仕事への熱意が薄く、反資本主義で、時には「反移民」を提唱する一方、ボボたちはよい教育を受け、希望の職に就いて熱心に働き、資本主義には異を唱えず、コスモポリタンであるーーといった対立構図を抱えており、これが選挙での左派の不振につながっている。ただ、反資本主義新党のブザンスノー氏は支持基盤を労働者層に置きつつ、ボボにも人気があり、当面は支持者を増やしそうだ。
 ボボの中でもさまざまな考え方の違いがある。たとえばルノーは『ボボたち』という歌の中で
「ボボたちは労働者層の地域に住む一方、子弟は(労働者の子弟と交わらないよう)私立学校に通わせる」
と歌っている。私は区に住んでおり、中上流層で、左派に投じ、多くの点でボボに当てはまる側面を持っているが、子供は公立学校に通わせている。ボボの定義は難しいが、今日、左派の多くは中産層、あるいは中上流層に深く根ざしており、特に左派・社会党幹部はほぼすべてが中上流層だ。これは新に起きた事実だ。
 フランスの都市部には多くのボボが住み、他国よりボボの比率はたぶん高い。フランスでは「左派」であることの社会的地位が「右派」と名乗るより、特に知識人の間で高く、さほど左派でなく不平等に違和感を唱えるわけでもない中上流層の多くの人が自分たちを「左派」と呼んでいる。

 フランスの左派はナチへのレジスタンスの実績などから確かに他の欧州諸国より広範な支持を得ているが、実際に政権を取ったのはミッテラン時代のみで、しかも左派政権と呼べる政策を取ったのは初期の3年のみだったという。現在の左派は中上流層と労働者層の分裂が進み、ボボはこの鮮明化の過程で生まれた新たな層ともいえそうだ。ボボが生まれた事実自体が、左派の揺れを象徴しているのかもしれない。


 福永渓 1954年名古屋市生まれ。毎日新聞甲府支局、東京社会部、アフリカ特派員ハラレ支局長、同ヨハネスブルク支局長、ウィーン支局長、パリ支局長など。著作『パリに吹くBoboの風』(第三書館)、『南アフリカ 白人帝国の終焉』(第三書館)、『アフリカの底流を読む』(ちくま新書)など。著者のHPは http://www.fukui626.club/

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