『邯鄲堂奇譚』の7巻目。邯鄲堂らしい不条理と理不尽から生じる悲劇と救いのストーリー。
『開けない夜』
今回は誰も護法神に戻ることなく、人間たちだけでストーリーが進行する。
邯鄲堂に、『蝙蝠の居場所』で登場した霊能者・氏家慎次から手紙が届く。北方本家の当主である佳彦に助力を願いたいという内容だった。
佳彦は氏家と女霊能者小森に会い、協力を約束する。
怨霊に取り憑かれた二人を同時に除霊する事態と成り、二人の霊能者は協力して事に当たるのだが・・・。
自分が「虐待されていた。親に愛されていなかった」と自覚した後、どのような苦悩に陥るのか、そして大人になってから虐待に気づいたときに起こりうる子供とは違う苦境をテーマにしている。
『カフェ・ミステリーのミステリー』
ケンは気まぐれに下りた駅で、小学校時代の同級生と再会する。
子供時代から不幸な出来事に翻弄されていたものの、ようやくカフェ・ミステリーを経営し幸せになった友人を、ケンは心から祝福する。
しかし、わずか1週間後、「やっぱり僕は幸せになってはいけないんだ」という絶望的な電話がかかってきて、ケンは再び友人のカフェへ向かう。
本人には全く非がないのに、勝手な思い込みで不幸へ突き落とされる恐ろしさ、必死に助けを求めているのに助ける側の差し伸べる手とすれ違う悲運をテーマにしている。