『邯鄲堂奇譚』の三作目。
『かなわぬ願い』
　ある雨の日、薫は大きな屋敷に家政婦と暮らす足の不自由な美少女アンナと知り合う。いじめが原因で歩けなくなったアンナに取り憑く怨霊を見た薫は、神に戻らず人間として救おうとする。
　被虐待者が、「自分が虐待されていたという事実」を頑なに認めようとしない姿をテーマにしている。
『言霊の行方』
　たまたま東京へ出た薫は、高校時代の同級生の裕太に出会う。上野のゲストハウスに住み調理師学校に通っている裕太は学生生活を楽しんでいたが、薫は背後に暗い影を見る。
　やがて裕太の住むゲストハウスで霊能者が死に薫は広覚と共に向かうが、すでにゲストハウスの人々は生きる屍になっていた。
　ネットで吐き出される悪意ある言葉が、現実の人間に跳ね返ってくる恐怖を描く。