安部公房の遺作『さまざまな父』の中に映画『キング・コング』が出てきます。
安部公房は、1961年に『SFマガジン』(同年12月号)の特集『座談会 映画/SFはSF/映画に何を期待できるか 』で、自らの映画観である、高いポエジーとスペクタクルの融合という考えを語っています。
この座談会の中での安部公房の映画に対する発言を読んで、その発言の真意、即ちスペクタクルとポエジー(詩情)の関係を、安部公房の作品の中に論じました。
これは、このまま安部公房の小説観といって良いものです。
普通に安部公房の小説や戯曲の世界に接している読者には、珍しい映画の世界での安部公房の発言す。そうして、1950年代1960年代の初頭は、やはり映画の時代でもありました。
当時の安部公房がどのように活発に発言をしていたか、その発言は最晩年の、また遺作の『さまざまな父』にまで及んでいます。
一言で言えば、安部公房がポーに学んだ仮説設定の文学とSF映画の話です。
刮目の論考だと自負しております。
安部公房の読者には、安部公房を知るための、興味ふかい一冊になっております。
是非、手にとって、お読みください。