三島由紀夫は、誰に、輪廻転生したのだろうか?
否、それとも……。
三島の遺作『豊饒の海』に従えば、誰かに生まれ変わったはずである。
いったい誰にだろう。
三島は最晩節に、浮世絵画集の序文を書いている。
しかしながら、その画集が世に出るおよそ半年前に、市ヶ谷の陸上自衛隊東部方面総監部
・総監室において、割腹自決を遂げるのである。
その画集こそ、無残絵、――あるいは血みどろの浮世絵と呼ばれ、幕末の浮世絵師・大蘇
(月岡)芳年の代表作であった。
その符号は何だろう?
まるで、自分の未来を予見するかのごとく、三島は、その仕事を引き受けたのだろうか?
それまで、浮世絵についての評論など書いたことがない三島が、である……。
私は、桜庭 幽という美術評論家である。
三島のことを調べているうちに、奇妙な世界に引き込まれて行くのだった。
総文字数2万8千788字。
第一章 三島由紀夫と芳年
――ある評論家の独白
第二章 三島由紀夫の悪霊
――ネオ右翼青年の主張