古事記神話を漢字原典でも読めるように現代語解釈文、漢字原典文、漢字解釈注を三点セットにして、目移りすることなく読める構成に編纂したのが本書です。、漢字のルビ付け、活字の拡大・縮小などが出来る電子書籍の特徴が生かせること、又、解らない漢字の辞書引き、百科事典での意味確認などが、その場で呼び出して理解が深められる電子書籍の仕組を実感して頂くために、紙書籍から電子書籍化を試みました。紙面も横書きから縦書きにして読める最初の試みです。電子書籍への編集はAmazonのKindleソフトで実現しました。Kindleソフトをパソコン、タブレット端末や携帯端末に導入して電子書籍としてお読みください。AmazonのKindle Paperwhite端末をベースにして編纂しましたが、Kindleソフト導入が可能な端末であれば、どの端末でも読んでいただけます。アップルのiPad、iPhoneでも読めるように編纂改良しました。
本表紙のデザインについて説明します。右下の人物は明治時代の菊池容斎画伯が描いた太安万侶像です。民部省の長官職で古事記を編纂答申した人物です。左下の漢字文は漢字原典に片仮名のルビが付けられています。18世紀の終わり頃に本居宣長は古事記傳を著わし、古事記の漢字原典にルビをつけて木版印刷で、「訂正古訓古事記」を出版しました。右下はその一部です。宣長の本職は医者でしたが、古事記の訓解に心血を注いだのです。木箱から取り出された書籍は、西暦1372年に写本にされて真福寺に伝わった三巻がそろう最古の国宝に指定された古事記版です。712年に太安万侶が編纂した原本は存在せず、660年後に発見された写本が、一番古い版です。太安万侶の時代には仮名はまだ使われていませんから、写本された真福寺本版にはルビはついていません。北斗七星の図柄のある背景図はキトラ古墳の天上面に描かれた天体観測図です。キトラ古墳の築墓時と古事記編纂時とは、同時期であり暦が改訂された時期でもありました。夜空の星座の動きから描かれる「天空の絵姿を具体的にイメージして語られるのが、古事記の神語りである」という思いからデザインしてみました。
太安万侶は具体的なイメージ(映像)で現実的な自然、人間社会、歴史などを漢字だけの文章で書き残してくれました。飛鳥京、藤原京、平城京の時代の文書担当の役人(史)が実際には従事作業した成果であったと思われますが、彼らが選択して使用した漢字の一字一句の意味を古事記の文脈の流れに沿って、白紙に戻って解釈してみる。本書は太安万侶と直接に交信するために編み出された企画書です。220年前に本居宣長は「古事記傳」という企画書を提示しました。本書は立ち位置が違う企画書です。本書は学術書ではなく、むしろ娯楽書として読んでもらいたいと思って著わしました。しかし無責任な内容になっていないかと恐れるものです。電子書籍の良さは修正がいつでもできることです。納得のいく修正はいつでも行っていきます。著者の書店に立ち寄っていただき有難うございます。今回、改訂した本書が電子書籍化した第一号書で、漢字原典と併読して読める古典シリーズは10冊になりました。著者の他書にもクリック願えれば幸甚です。2016年2月22日。