セレブな美女と結婚する話。妻には、夫の僕にも言えない秘密があった。
留学先で就職したヒロシは製薬会社の娘メアリーに突然見初められ、二人はやがて結婚する。メアリーのきまぐれで二人は新居を売り払って原始共産制への回帰を目指す亜寒帯「ジオコミューン」に移り住む。「女王」メアリーは男たちとヘラジカやジャコウウシの狩りに出かけ、ヒロシは村に残って一人で釣りに明け暮れて過ごす。メアリーとの夫婦生活は奇妙なものだったが、ヒロシには彼女との関係がずっとこのまま破綻なく続くように思われた。そんなヒロシの前に、メアリーの許嫁で穀物メジャーの御曹司エリック、ヒロシの元カノでフリージャーナリストのナターシャ、学生時代の友人で天才的ハッカーのマイケルらが現れて、ヒロシの運命は次第に混沌としていく。
・・・
「妻が僕を選んだ理由は、すまないが、僕にもわからない。他にいいようがないんだ、エリック。彼女は非常に特殊な女性だ。僕にはそれしかわからないんだ。信じてくれ。」
「じゃあ、あんたはなぜジュニアを妻に選んだんだ?」
この質問にも僕は大いに困った。
打算?
逆玉の輿?
そんな考えが僕に全くなかったとは言えない。だが実際のところ、僕は最初ごく軽い気持ちでメアリーと付き合い始めた。よその国からやってきた僕の目の前にプレイメイトみたいな美女が突然降って湧いた。しかもセレブだ。そして向こうから付き合いたいと言い出した。そして成り行きで結婚した。都合の良すぎる話だが、ハーレクイーンやラノベにはよくある展開だ。絶対あり得ないとは言い切れない。
メアリーもただの気まぐれで僕と付き合いたいのだと思っていた。徐々に、メアリーと、メアリーの母のメアリーに、僕がメアリーと結婚せざるを得ないところまで、じわじわと追い詰められていった、というのが真相だ。
※この物語は完全なフィクションです。
※全部で約13万字(原稿用紙換算323枚程度)あります。