本書は、現代刀剣界のリーダー吉原義人刀匠に、刀にまつわる興味深い話や刀匠自身の作刀法をプロセスを追って解説してもらったものです。
構成は第1章が刀匠との対談、第2章がプロセス解説となっており、対談では、「切れる刀は美しい」と語る刀匠が、名刀の美しさと切れ味の関係を刀剣のメカニズムから説き起こします。プロセスでは、焼き入れの温度や冷却の速度と「沸」、「匂い」また「映り」などの関係を冶金学に基づきながら分かりやすく解説しています。
吉原義人刀匠は、若き日、江戸時代以来数百年もの間途絶えていた「映り」の表現に成功し、それ以来常に刀剣界をリードしてきました。また昭和62年(1987年)には明治以来100年ぶりとなる「兜割り」に挑戦して、これを果たし、「美術刀剣」と呼ばれる現代刀が、本当に「切れる」ことを証明し、刀剣界に大きな刺激を与えました。
本書は、日本刀という武器でありながら美術品でもある、世界でも類をみない工芸品に、作り手の立場からスポットを当てた、初心者にも上級者にも読み応えのある刀剣書となっています。