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あなたは『ホームレス自立支援法』という言葉を聞いたことがありますか?
家を失い、路上や空き地などで生活を余儀なくされているひとたちへの、社会復帰や自立への支援へ向けた法律です。
「ホームレス」という言葉が示すように、家がないだけ?
違います。
ホームレスのひとを呼び戻そうというこの社会
「受け皿」などという社会システム
地域社会のホームレスのひとへの意識
就労環境
そうしたもののどれもが、本質的にホームレスのひとを遠ざけているのではないか。
「ホームレスの自立の支援」とは、ホームレスのひとにむけられた言葉です。
「ホームレスとなることを防止する」という言葉は、ホームレスのひとが、ふたたびホームレス状態にならないように、という意味もあれば、社会全体に対して「ホームレスにはなるなよ」といった言葉であると共有します。
ホームレスのひとへの人権にたいする配慮こそ必要です。
「さげすまれ、差別され、排除され」てきました。
「公園から出て行け」
「道路に寝るな」
「河川敷に仮設住宅を作るな」
「橋の下に住むな」
「景観を損ねるから、街から出て行け」
「治安が乱れ、汚らしいから、警察が逮捕しろ」
「他の利用者のご迷惑になりますから、図書館から出てください」
「服装の汚れている方には入店をお断りしております」
……
あらゆる日本の法律が、ホームレスのひとに対して、拒絶的な姿勢で対応しています。
ホームレスのひとに、本質的に救助され得る論拠はないかのようです。
ホームレスのひとは、構造的に「地域社会から追い出されたひと」です。
しかも理由のすべてを、ホームレスのひとに負わせています。
「ホームレス」の対立概念は「地域社会」「家」「国家」です。
「ホームレスのひと」の対立概念は「地域社会のひとびと」「家族」「国民」です。
「理解」の対立概念は「差別」です。
「共生」の対立概念は「排除」です。
こどもにはそのように教育しますし、しつけます。
自分でも、いましめます。
それらの恐怖が、ホームレスのひとを、地域や、社会や、意識から遠ざけ、排斥することで、どうにか日常の平和を実感しようとしているかのようです。
しかし、ほとんどのホームレス支援活動をしているひとたちが感じているように、ホームレスのひとにこそ、多くを学び、多くを与えられ、想像さえしなかった輝きをひきだされます。
「ホームレス」という言葉のなかにひそむ差別。排除を肯定するニュアンス。責任を転嫁する悪意を感じずにはいられません。
まるで、「ホームレス」のひとたちが、怠け者で、人生の失敗者で、汚らしいクズ、であるかのような印象を与えているのではないか?
「ホームレス」
「ホームレス状態」
「ホームレスの状態に置かれているひと」
「ホームレスの方々」
いろいろな呼称を、いろいろな個人やグループや法律が、使用していました。
でも、どれも、責任の所在が明確ではありませんでした。
わたしたち日本福祉新聞は、「ボンドレス(Bondless)」という言葉を、いま、うみだします。
「ボンド(Bond)」とは、「絆」
「ボンド(Bond)」とは、参加したり、他の何かにしっかりと結合すること。
個人の能力や資質に還元されることのない、社会全体のなかでの指標。
単に「家」を失っている、仕事を失っているのではなく、社会から「つながりを断たれている」
家をえても、つながりが断たれたなら、むしろ「ボンドレス(Bondless)」は深まります。
職をえても、職場で孤立したなら、「ボンドレス(Bondless)」です。
教育課程のなかですでに、「ボンドレス(Bondless)」が始まっています。
競争社会や、国家主義、民族主義のなかにある、排他性という「ボンドレス」が、世代を超えて、幾重にも更新され、補強されています。
「ホームレスの状態に置かれているひと」の3割が、なんらかのしょうがい者であること。
貧しい国からやってきたひとびとも、路上や安宿にあふれているということ。
「ボンドレス(Bondless)」化は、ますます、多面的で、重層で、深刻になっています。
家がない、職がない、おかねがない、居場所がない、病院へ行けない、社会福祉の支援を受けられない、地域に差別されている……
それらはみな、「ホームレスの状態に置かれているひと」の個別の特徴ではなく、「ボンドレス(Bondless)」に現れた、それぞれの現象面(Surface)です。
現象面(Surface)だけを整えようとしても、「ボンドレス(Bondless)」が継続され、、隠され、強化されていたなら、問題の解決にはならないどころか、より一層の「ボンドレス(Bondless)」に陥ります。
「ホームレスの状態に置かれているひと」は、個人の能力的問題、気質や社会性、しょうがい、として片付けられてきました。
しかし、わたしたち日本福祉新聞は、「ボンドレス(Bondless)」被害にあっている人々、として受け止める試みをします。
「ホームレスの状態に置かれているひと」を、ボンドレス(Bondless)被害から守ることが、緊急の課題です。
ゆえに「わたし」は、おのれの「ボンドレス(Bondless)」を認め、わたしたち日本福祉新聞は「ボンドレス(Bondless)」という言葉で、「ホームレスの状態に置かれたひと」と「ホームレスの状態にした社会」と「わたし」とを、解説(ボンド)していきます。
この本が「ボンドレス」相互の救助に少しでも役立てられれば幸いです。
『ホームレス自立支援法』全文解説
<関連重要法など>掲載
1.国連の『世界人権宣言』
2.国連の国際人権規約「社会権規約」『済的、社会的及び文化的権利に関する国際規約(A規約)』
3.国連の国際人権規約「自由権規約」『市民的及び政治的権利に関する国際規約(B規約)』
5.『日本国憲法』
6.『生活保護法』
7.『生活困窮者自立支援法』
8.『ホームレスの自立の支援等に関する基本方針』
9.『ホームレス巡回相談事業実施要綱』