前回アップした作品「武田高信の没年に關する一考察」、この仰々しいタイトルから御推察頂けると思いますが、私は中世、取り分け戦国時代の研究に励む、しがない、且つ完全にローカルな研究人です。そんな畑違い・場違いな私が今回、ご提供申し上げるのが本作品。皆さんは多分、タイトルを見ただけで、「どうせ国探し、都探しに終始して「魏志倭人伝」のアチコチ引っ掻き回し、都合の悪いところでは誤記だとか何だとか言って、結局は自分が目指す場所へ読者を引っ張って行きたいという、ただそれだけの本なんでしょ?」と、思われるでしょうが、お生憎様。時代違いと言う事もあって、それらがどこにあるか、には全くと言ってよいほど興味がありませんでしたから、そのために書いたものではないのです。
それ以外に何を書くの? それがあるんです。私の興味を掻き立てたのは所在地よりも、これほど多くの時間と人材、英知を結集しながら、なぜ未だに答えが出ないのか、これが全てでした。きっかけはヒョンな事からでしたが、同じ文献史学畑の一人として接して見た時に、どこに問題があるか判らなかったのです。読めない方が不思議、という感じ。多分、相応の専門知識や蘊蓄を持たない分、新しい目で道中迷わず歩けたのだと思います。結果として、あの時旅した人が示すところは大体判りました。問題は、それ以上進めないところをガムシャラに進もうとしたのがいけないのですが、ま、それは置いときます。
要するに全ての原因は、国や都探しに必死になる余り、最も世話になっている肝心な文献の正体へ、ほとんど関心を向けなかった事、に尽きます。これって、研究に入る前の約束事と言ってもよいくらいに大事な事なのですが、この時代の研究者は、そこを放り出して、いきなり目的地探査に飛び込む方々ばかり。それに関係する文言だけを頼りに血眼になる…。これでは例え足許に落ちていた物でも見えなくなります。最初から最後まで「誤記」と言わずに読み通せるか、できるならどんな結果になるか、ここをメインにしました。これまでの論争に疑問をお持ちの方、これからこの世界を旅しようとなさる方々のために、文献に向き合う際の大事な点を、本邦最大の謎を題材に取り上げて見ました。かなり見えて来る景色が違うと思います。A面の流行り歌に聞き惚れるのもよいですが、タマには音色の違うB面のクラシックで目や耳、頭をリセットするのもいいものですよ。
目次見本
プラトニックな片想い ♪amoroso
目は毫毛を見るも睫を見ず ♪adagio
ママ、期待通りのボクでなくて、ごめん ♪amentando
あんだ達、記主んアレ、見よったと? ♪religioso
過ちて改めざる 是を過ちと謂う ♪tan tanto
ボルダリングにまでフィン ♪allegro ma non tanto
邪魔者は消せ! ん? ♪stretto
歩ける陸路を封印し歩けぬ記主を傍観す ♪marciale
暗証の禅師、明証の解を埋める ♪comodo
上手い、速い、易い! ♪legato
不気味な「ゴキバーガー」がウケた譯 ♪sforzando
伊都國でのあうふへーべん ♪rinforzando
[追 補] analyse
ウチ…、国語も算数も嫌いになってん ♪buffo
なにワヤクゥしとっだい ♪fortississimo
恐るべし、倍返し理論 ♪misterioso
終点着いちから起こされてん、なぁ ♪alla zingara
會稽の端を濯ぐ ♪pianississimo
わしぅ忘れちょらんか ♪allegro non troppo
遠すぎたっち? よかから黙っちろ ♪apagados
由らしむべし、知らしむべからず ♪fuoco
善人の出来心を擽るイト甘き罠?♪insensiblemente
プラトニックな両想い ♪prestissimo
古代中国の都市伝説/記主を旅に駆り立てたもの ♪cadenza
B面、終わったばってん… ♪fine / da capo